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 TPPと消費税率の引上げ、2大テーマを中心に大阪と横浜で経済講演。

 1月14日、大阪にて「2012年の日本、10年後のニッポン。〜迫る選択のとき、新たな経済財政政策を組み立てる〜」をテーマに5度目のセミナー講演を、また、1月18日には、横浜のロイヤルホール・ヨコハマで開催された米津塾にて「今年の経済を占う。〜2012年、日本の経済財政の本質的な論点は何か〜」と題した講演をいたしました。「日本化」、つまり「課題解決に向けて決断できない国、日本」との汚名を返上できるか、今年2012年は日本の正念場の年。議論はTPPと消費税が中心になりました。

 新年を迎え、松田まなぶは、1月14日、大阪にて「2012年の日本、10年後のニッポン。〜迫る選択のとき、新たな経済財政政策を組み立てる〜」をテーマに5度目のセミナー講演を、また、1月18日には、横浜のロイヤルホール・ヨコハマで開催された米津塾にて「今年の経済を占う。〜2012年、日本の経済財政の本質的な論点は何か〜」と題した講演をいたしました。「日本化」、つまり「課題解決に向けて決断できない国、日本」との汚名を返上できるか、今年2012年は日本の正念場の年。議論はTPPと消費税が中心になりました。


 

●TPPと消費税にどう向き合うか、これらの論点から今年の議論を開始。

日本の現状において目立つ問題は、TPPや消費税に向けて決断し、有権者を説得することができないでいる日本の政治の弱さ、まさに「政治の失敗」ともいえる状況です。しかし、もっと深刻な問題は、日本国民全体の間に「弱い国家、ニッポン」との想定が暗黙のうちに蔓延していることではないでしょうか。

問題点ばかり指摘して注目を集め、現実的な答は出せていない日本のメディア、学界や論壇、インテリたちの責任も大きいです。

国家として問われている本質的な論点を国民にしっかりと説明する能力の欠けた政治、その中で、重要問題に対する理解が十分にできないでいる国民、この状況をなんとかしなければ、日本は大事な決断ができません。

大きくいえば、昨年の3・11が提起した課題も含め、日本が「世界のソリューションセンター・ニッポン」を目指し、「日本新秩序」の形成に向かう最初の年に当たるのが、今年の2012年だと考えています。それは、世界に先駆けて、日本が「活力ある超高齢化社会の運営モデル」を構築するという、10年がかりの大事業に歩み出す年でもあることを意味します。

ただ、その一方で、日本にいま、せっかく訪れているチャンスを活かすことができなければ、「失われた20年」が「失われたニッポン」へとなってしまう。そうならないよう、まずは、本年の具体的な課題であるTPP交渉参加と、2015年度に向けた消費税率引上げの決定について、きちんとした情報と論点を分かりやすく提示する必要がある。そこから松田まなぶの今年の言論活動を始めました。

●誤解だらけのTPP、その正体は?

TPPの正体とは何か。それは実は、日本人の生き方を問うものです。

そもそも、TPP賛成論者を売国奴と決め付ける「亡国論」が、ここまで日本を席巻する姿はやや異常です。正確な情報と事態への分析的な認識を持てば、例えば「米国陰謀論」が空想であることはすぐに分かります。すでに日本は世界で最も開かれた国の一つであり、「開国」という言い方もやめるべきでしょう。TPPそれ自体が米国の対日輸出を大きく増やすものではありません。打撃を受けるのは農協(農業ではない)ぐらいですが、TPPとは無関係な医療制度までもが対米恐怖心を煽る材料にされています。

TPP交渉への参加とは、世界秩序づくりへの日本の意思表明です。それは、未来の国際スタンダード形成に最も有利な形で日本が参画することを意味します。交渉参加に逃げを打っていては、将来、日本とは無関係に出来上がった秩序を押し付けられるだけです。

日本はこれまで、世界のスタンダード形成に参画できずに多くの国益を失ってきました。リスクを恐れてヌクヌクと安楽死の道を進むのか、将来の希望に向けてチャレンジする道を行くのか、日本人の生き方が今、問われています。

松田まなぶは近く、新書版になりますが、「TPP興国論」を上梓する予定です。

TPPで日本は強い国になる。それは、これから日本新秩序を生み出す日本が、それを世界新秩序に反映させていく過程でもあります。松田まなぶが日本復活の道として提案しているのが、「不老長寿の国、日本」+「豊葦葦原瑞穂の国、日本」+「日出国、日本」⇒「黄金の国、ジパング」大作戦。これを実現する上でも、TPPは重要な道具になりえます。

●消費税率引上げを「希望ある増税」に。

 消費税増税についても、誤解が多いようです。例えば、それは本当に国民にとっての負担増になるものなのでしょうか。

 国民には、高齢世代と現役世代と将来世代がいます。その全体でみれば、消費税増税は国民負担の増加にはなりません。それは、現役世代や高齢世代が負担していない税負担分を将来世代が負担している形になっている状態において、将来世代が負担する分を一部、現役世代や高齢世代の負担へとシフトさせるに過ぎないからです。国民全体の負担は同じです。むしろ、現状のほうが赤字国債の金利負担分だけ全体の負担は大きいです。

現在、消費税収入のうち国に入るのはその6割弱程度(残りは地方の財源に回ります)、それが全額、基礎年金、老人医療、介護という高齢者向け社会保障(高齢者3経費)に使われることが国の予算総則で定められていることを、国民の多くが知りません。

それら高齢者3経費の国の支出は年間で約17〜18兆円、これに対して、国に入る消費税は7兆円あまりしかなく、不足分の約10兆円は赤字国債として、将来世代の負担へとツケ回されていると言ってよい状態です。いわば、毎年10兆円の出血状態にあります。

私たちの世代は、自分を育ててくれた親の面倒をみるにあたり、その大半を子や孫にツケ回していることになります。それは道徳的にいかがなものでしょうか。消費税とは、国の財政の問題である以上に、私たち世代の責任の問題です。

単純化していえば、社会保障に使うための税金は、国民Aさんから国民Bさんへとおカネを移転するものに過ぎません。年金や医療などの改革でその額を少なくする努力は必要ですが、消費税増税は、少なくも政府の懐を豊かにするための増税ではありません。政府はそうしたおカネの移転の仲介役です。うち国が仲介している分について、毎年10兆円の出血に対して止血をほどこすのが消費税率の引上げです。

つまり、消費税の増税とは、Aさん(高齢世代)に対してBさん(現役世代)がおカネを渡すに際し、Bさんがその大半を負担せずにCさん(将来世代)にツケ回しをしている状態を少しでも正そうとするものです。

今回、消費税率を15年度までに5%引き上げる「社会保障と税の一体改革」では、消費税収の使途は、国と地方ともに社会保障に限定することになっています。ただし、その限定先をこれまでの高齢者3経費から、同じ社会保障でも現役世代向けなども含め、年金、医療、介護、少子化対策の「社会保障4経費」へと広げています。

15年度には、国と地方の社会保障4経費は約42兆円になると推計されています。現在の5%の消費税率では、国と地方の消費税収入は全体で13兆円弱ですから、その3分の1しか賄えない状態です。消費税率を10%に上げれば、税収は約27兆円になるため、社会保障4経費の約3分の2が賄えることになります。

 15年度の時点で社会保障4経費をすべて消費税で賄い、そのツケを将来世代に回さないためには、本来、さらに消費税率を6%上げて、16%にする必要があります。現行制度のもとでは、消費税率の最終的な引上げ目標を16%に設定するのが常識的な線だといえます。世界標準は20%程度ですから、これで日本も高齢化が進むフツーの先進国に仲間入りです。

 消費税増税の前提は、公務員給与の引下げや、さらなる行革と言われています。確かに、ムダの削減は重要課題だと思います。しかし、日本はOECD諸国の中で公務員数の人口比率は最も低く、公務員人件費は最も安上がりになっている国です。年金など、退職後の給付も主要先進国の中では最も少ないです。少なくとも、こうした事実はきちんと押さえておいたほうがいいでしょう。

●大阪「21世紀をまなぶ会」1月14日(土)では…

大阪でのこの定例勉強会も、第5回目の開催となりました。今回は、新年ということで、経済講演は1時間程度で切り上げ、飲み物とおつまみで参加者の皆さまと懇親の場を持ちました。日本の国に対する危機感は皆さん、大変強く、色々な議論に花が咲きました。
 消費税について、上記のような説明を、なぜ政治家は誰もしないのか、そのように説明されればきちんと理解できるのに、という声もありました。世界の大変な競争の中で日本は国益を実現しなければならないのだから、高い給料を払ってでも官僚には優秀な人がなってくれなければ困るという意見もありました。

この「21世紀をまなぶ会」、次回は下記のテーマと場所にて、2012年2月10日(金)18:30開始で予定しております。

テーマ:日本は持続可能な国なのか。〜デフレ問題も社会保障も金融も、世界に対して日本が答を出す。〜

会場:大阪市北区中崎西4−3−32 タカ大阪梅田ビル9階 セミナールーム

お問合せ先:「21世紀をまなぶ会」Tel:06-6375-3331  Fax:06-6375-3341

Eメール: matsuda-pri@kne.biglobe.ne.jp

●横浜「米津塾」1月18日(水)[於:ロイヤルホール・ヨコハマ]では…

松田まなぶは、この2年近く、米津暁男氏を塾長とする横浜の「米津塾」のメンバーとして、米津氏始め、同塾の皆さまに大変お世話になっています。米津塾長から新年の会に当たり、今年の経済の先行きについて講演を依頼されました。
 ここでは、上記の論点に加え、欧州債務危機のメカニズムと日本に与える影響や、日本経済の今後の推移などに重点を置いて話しました。

その中で強調したのが、赤字国債と建設国債の区別です。消費税率引上げは、将来にツケだけを残す赤字国債を減らすことで財政規律の問題にケリをつけるものです。それが担保されるならば、逆に、将来に資産を残す建設国債のほうは、それを増発して公共投資を増やし、デフレ脱却を目指す積極財政がとれるようになるはずです。
 松田まなぶのこの主張が、特に耳目を引いたようです。消費税引上げの説明はそれで行くべきだとのご意見もいただきました。

ちなみに、今回の米津塾は、その後、同じ会場で、新年恒例の懇親パーティーとなり、その場で松田まなぶのチェロ演奏と松田裕美子のピアノ演奏を数曲、皆さまに楽しんでいただきました。

経済講演は、その他、色々な機会に行っていきたいと考えています。日本再建に向けて、できるだけ多くの方々とともに、日本の本質的な課題は何かを考え、その解決の道を模索していきたいと思っております。