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 政治が有権者に示すべき選択肢は何なのか。大阪にて、91日に経済講演を実施。「自立、国家、希望」を軸にいまの対立軸を超えて進化するニッポンの道を議論。


 


 9月1日に大阪で行った13回目の経済講演では、「自立国家への新しい選択」をテーマに掲げ、いま国論を二分する消費税、原発、地方分権などを取り上げました。単に賛成か反対かという「不幸な二項対立」を超えて、希望に向けた答をどう出していくかが政治には問われています。

 

●対立軸を超えて希望を描く。

日本の次なる道は、「自立、国家、希望」を根底に据えて、思考の「維新」を図り、資本主義を進化させるところから拓かれると考えます。そのようなビジョンから、日本の真の課題は何であるかがみえてくる。そのもとに各分野の政策体系を描き、国民の信を問う。

次の国政選挙に必要なのは、こうしたレベルでの選択肢を有権者に提示することだと思います。

しかし、いまの政治では、国論を二分する問題について、賛成か反対かで踏み絵を迫るような「不幸な二項対立」が横行しています。消費税も原発もTPPも道州制もそうです。いずれも、その答は、賛成にも反対にもありません。

大事なのは、日本が強い国になることです。強くなれば、対立軸は「対立」ではなくなります。強くなるために「進化」する。答えは「不幸な二項対立」を超えたところに描かれると考えます。

政策には手順と時間軸があります。賛成か反対かの二項対立の議論の多くには、その点での混乱がみられます。まず、未来の希望へのストーリーが必要です。そこから、創造的な政策選択を組み立てる営みこそ、いまの政治に求めるべきものだと思います。

 

●大阪「21世紀をまなぶ会」9月1日(土)では…

9月1日(土)に大阪で開催した「21世紀をまなぶ会」では、こうした観点から、消費税、原発、地方分権を論じました。

今回は、参加者の皆さん一人一人にご意見を求めながら、一部はディスカッション形式で会を進めました。参加者の間で活発な議論交流が行われました。

地方分権については、「平時」の行政は思い切って地方に委ね、国はこれまで十分に果たせていなかった機能を強化し、そこに人材などの資源を移していくこと。それが「地方の自立」と「強く機能する国家」を両立させる道であることを提起しました。

議論が集中したのは消費税と原発でしたが、不幸な二項対立を乗り越える道は何なのか、松田まなぶが提起した論点について、それぞれ後記の[参考]をご参照ください。

 

●第14回以降のスケジュール

第14回以降も、松田まなぶが描く日本の希望について語ってみたいと思います。

第14回は、2012年10月5日(金)18:30〜より、「「維新」を戦略化する。〜希望あふれる国へ国家機能を立て直すために…決断のとき〜」をテーマに開催する予定です。

会場は、

大阪市北区中崎西4−3−32 タカ大阪梅田ビル5階の松田まなぶ事務所

です。

お問合せ先:「21世紀をまなぶ会」Tel:06-6375-3331  Fax:06-6375-3341

Eメール: matsuda-pri@kne.biglobe.ne.jp

経済講演は、その他、色々な機会に行っていきたいと考えています。

日本再建に向けて、できるだけ多くの方々とともに、日本の本質的な課題は何かを考え、その解決の道を模索していきたいと思っております。

 

[参考1] 消費増税を超える道−「経済政策」と税の一体改革で日本力倍増へ

消費増率引上げをめぐる政治の対立軸は、果たして、「財政再建(国民生活圧迫・景気悪化)、vs 景気や行革優先か」なのでしょうか。

社会保障を安定させる財源として、消費増税の必要性は、多くの国民がすでに理解しています。今回の「三党合意」に反対した「中小野党」とも言われる政治勢力の中にも、将来的には消費増税が必要だと認める政党は多いです。対立は、いま、デフレのときになぜなのか、その前にやるべきことがあるのではないか、という点にあるようにみえます。

これも、本質的には、時間軸や手順をめぐる対立です。少なくとも、財政再建と景気に関していえば、それは次の道筋を明確に描くことで両立し、対立軸ではなくなります。


(第一段階) 2年後の消費税率引上げを決定。

まず、2年後の消費増税を決めてしまう。

ただし、同時に日本経済の今後の道筋を描くべきです。今回成立した「社会保障と税の一体改革」では、2014年4月という、2年近く先からの消費増税が決められましたが、欠けているのが経済の道筋の提示です。

将来の不確実性の軽減こそが最大の経済政策です。これまでは、消費税による社会保障財源の確保が担保されていませんでしたが、これが担保された以上(まだ不十分ながら)、経済政策の局面は前へと進んだと捉えるべきです。

「社会保障に財源が食われ、先進国で最も財源の裏付けのない政府」。これが日本の状況ですが、2年後にここからの脱却が始まるのであれば、今度は、もっときちんと機能する政府を再構築する、新たな局面へと向かうべきです。

この段階で、「国力倍増計画」や「経済力倍増計画」を策定すべきです。


(第二段階) 増税までの間におカネの回る経済を構築。

次に、増税決定後〜増税までの2年間に、おカネが回る経済を構築する。

そのきっかけとなるのが、政府投資倍増です。被災地復興、防災安全国家の建設、老朽化したインフラの再整備、経済社会の新たなニーズに即した戦略的投資など、社会的実需のある投資のテーマは百出状態です。消費増税で財政規律の問題に一定のケリをつけた分、将来の経済財政の展望(希望)のもとに積極財政へ転じます。それによる財政悪化は、経済が回転し始めれば一時的なものにとどまります。

政府投資以外にも、防衛費拡充による国防力倍増なども図るべきかもしれません。

民間でも、耐震・免震構造へのリフォームや建て替えに政府が促進策を講じれば、1981年の耐震基準以前に建てられた住宅やビルについて、膨大な建て替え需要が顕在化するとされています。

経済全体をおカネの回る経済とすることで、消費税の転嫁が容易な経済にしておきます。


(第三段階) 赤字国債減と建設国債増を組み合わせた財政運営。

2年後の増税時から、「財政ツイストオペ」を実施する。

これは、2年前との比較で、消費増税で減少する赤字国債発行の減少分に見合うだけ建設国債発行を増やす操作のことです。その結果、国債発行額は全体として2年前と変わりませんから、財政を悪化させることなく、景気を刺激することになります。

つまり、経済学が教えるように、増税額と政府支出の増加額が等しい場合、その景気刺激効果の乗数は1です。消費増税による13.5兆円の増税分と同額、財政支出を増やせば、13.5兆円もの巨額なGDPアップ効果がもたらされます。

今度の消費税率5%引上げで、国と地方の社会保障費の3分の2の恒久財源が確保されることになります(現状では3分の1しか財源は無い状態)。この5%引き上分のうち、約2%分が、社会保障の支出増(社会保障の機能強化で1%、高齢化による支出増で1%)に充てられますが、残りの約3%分が、将来世代へのツケ回しの減少に充てられる計算です。

これが国の毎年度の赤字国債発行額を6兆円程度減少させるとすれば、この「財政ツイストオペ」で、国の建設国債の発行額を6兆円ほど増大させることになります。

2012年度の建設国債の発行額は約6兆円ですから、これは政府投資を12年度よりも倍増させることになります。それは、1990年代の平均水準に戻ることを意味します。

他方で、これによって日本が持つ巨額の金融資産(約2,800兆円)の内容が、将来にツケだけを残す赤字国債(及びその借換国債)から、将来に資産を残す建設国債にシフトしますから、日本の金融資産の性格は従来よりも意味のある、将来の生産性向上にもつながるものへと改善することになります。これも、経済でのマネー循環を強化します。


(第四段階) 経済成長の定着で財政健全化へ。

こうした財政政策と経済運営で、2010年代末に向けて日本経済は力強い成長を継続。

名目で4%の成長軌道(実質成長率2〜2.5%、インフレ率1.5〜2%)を実現します。名目成長率が上がれば、それと連動して金利が上昇し、国債の利払い費負担が増えて、いったん、財政は悪化しますが、2010年代を通した経済成長の持続で、いずれ、こうした国債費の増加を上回る税収増が達成されて、2020年代には、財政の健全化が明確になっていきます。


(第五段階) 消費税の必要引上げ幅の最小化で、増税ストップ。

2020年頃の消費税率引上げをもって、消費増税はストップ。

2015年度の社会保障費を前提にすれば、消費税率をさらに6%引き上げて16%にすることで、社会保障の恒久財源は全額、確保されることになります。しかし、社会の高齢化は15年度以降も続いていきますし、そのままでは、さらなる消費増税が必要になります。

しかし、上記の経済財政運営で日本経済が力強い成長軌道に乗っていれば、それによる消費税の自然増収が見込まれます。また、巨額の金融資産など、日本の潜在力を超高齢化社会の運営にうまく回していくことで、「日本型共助モデル」を構築することができれば、高齢化に伴う必要増税額も減少するでしょう。

以上の営みで、日本の消費税率が16%よりもさらに高い税率とならなくても済むような経済社会を構築していく。そこにこそ、本質的な課題があります。今のままの経済社会の状況では、消費税率はいずれ20%を超えることは避けられないでしょう。将来の税負担をできるだけ軽くできるような創意工夫にこそ、日本の選択肢があります。


 

[参考2] 真の「脱原発」を実現する道は?

 国論を二分する「脱原発」問題も、果たして、「すぐに原発全面停止」を言わなければ、原発賛成派になってしまうのでしょうか。どうも、「原発賛成vs反対」という単純な図式が意味ある対立軸になるとは思いにくいです。


●時間軸の設定のしかたによって結論は異なってくる。

 ザイン(sein:事実)とゾルレン(sollen:当為)という言葉がありますが、「かくあるべき」という理想の姿をめぐる議論と、実際の制約条件のもとで現実に成り立つ解は何かという議論とを混同してはいけません。

また、同じ「脱原発」でも、時間軸の設定によって結論はさまざまです。

今回の大阪での会でも、参加者に脱原発の賛否を問うてみたところ、よく議論してみると、賛成論者も反対論者も、具体論では同じ考えであることが判明したりしました。政府の「討論型世論調査」では大半の国民が原発ゼロに賛成していますが、この会の参加者で原発再稼働に反対している人はほとんどおらず、原発維持派の方も、長期的には脱原発を支持していました。

国民の大多数は、「実際に脱原発ができるようになった時点での脱原発」という考えではないかと思われます。

実際のところ、原発の新設には、意思決定から実際の稼働まで30年かかると言われていますから、少なくとも当面は原発の新設が決定できない状況が続くとすれば、既存原発を40年で廃炉にするという制約条件のもとでは、いずれ日本から原発は消えてなくなることになります。その点では、すでに長期的には「脱原発」はほぼ既定路線です。

ですから、意味ある選択肢は、できるだけ早く「脱原発」ができるようにするにはどうすれば良いかという点に描かれるのだと思います。


●ソリューションを出すための方程式。

結局、この問題は、次の@〜Cの4つの変数について最適解を求める連立方程式の問題だと思われます。

すなわちエネルギー政策の目標とは、@安定(エネルギー供給の確保)、A安全(放射能や災害等から人間を守る)の「2つの安全保障」にあり、それらの最大化を、B経済的負荷、C環境負荷(CO2の削減)の「2つの負荷」の最小化によって達成することであると整理できます。

この連立方程式において、@とAはできるだけ大きく、BとCはできるだけ小さく、という形で最適解を出していくところから、現実のエネルギー政策の答が出てくるのではないでしょうか。

例えば、Aの安全を最大にすることの答を、原発の即時全面停止に求めた場合、他の@、B、Cは満たされません。この安全という問題についても、日本だけが原発をやめてみたところで、隣国の中国などが大量の大型原発の新設を計画していますから、本当に安全を確保するなら、原発事故で先達となった日本が技術協力することで、その脅威を軽減することが求められます。また、原発施設は稼働していてもいなくても、災害によって生じる放射能の危険性はほぼ同じだと言われています。

他方で、@の安定を極大化しようとすると、そこで重要な論点として出てくるのが、日本がエネルギーの96%を海外に依存しているという現実です。日本の自給率は、食料は40%ですが、エネルギーは4%しかありません。

GTCC(ガスタービンコンバインドサイクル発電)ならば、火力発電所の効率が上がるので、原発がなくても発電量は賄える、最近では、シェールガスやシェールオイルが出てきたので、原発は要らなくなったという議論もあります。

確かにそうかもしれませんが、国家の「自立」を軸に考えれば、その結果、日本のエネルギー自立は遠のくことにならないか、経済面でも国際情勢によって振り回される脆弱な構造が強まらないか、検討が必要です。少なくとも、これらが実用化するまでの間はどうするかという問題があります。


●世界一の環境型先進国家、「日出国、日本」へ

 その他、脱原発を現実のものとするためには詰めるべき点が「ザイン」(事実)の問題として多数あります。

 ただ、少なくとも明確にいえるのは、上記の方程式の究極の答は、新エネルギー体系の確立にあるということです。日本は世界最先端の「課題先進国」として、この面で世界をリードする国になる。それによって、エネルギーの自立を達成し、真の「自立国家、日本」を実現する道をこそ、追求すべきだと思います。

その際、日本は豊かな海洋資源に恵まれた国であることに着目すべきです。日本が将来、資源輸出国になる可能性は十分にあると指摘する専門家もいます。

潮流の激しい周辺海域を有する日本は、世界でも珍しく、潮流発電の実用化が可能な国だという指摘もあります。メタンハイドレートだけではなく、海洋にはさまざまな可能性があります。もし将来、放射能とは無縁の核融合の実用化が実現できた暁には、海水から無限のエネルギーを取り出すことで「太陽」そのものを創ることにもなります。

紀元607年、聖徳太子が小野妹子を遣隋使として派遣し、煬帝に渡した親書に記された「日出国」(ひいずるくに)を、それから千四百数十年を経て、まさに東から太陽が昇る海洋(自然エネルギー源の宝庫)に位置する日本は、ついに実現することになる。

 それぐらいの「希望」を描きながら、フクシマ後の日本は次の歩みを開始すべきだと考えます。そこに至る道筋の中で「原発に頼らない社会」の実現に向けて、実効ある道筋を冷静に模索すべきではないでしょうか。