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維新八策と国家体制をテーマに、橋下市長お膝元の大阪にて、46日に経済講演を実施。日本のデフレ対策についても議論。

 

 日本は政治も統治体制も、国全体が大きな組み替えの時期に入っています。デフレ経済からの脱却のためにも、政策レジームそのものの転換が欠かせません。それに向けて各政党は何を有権者に選択肢として示すべきなのか。4月6日に大阪にて、「維新八策と国家体制〜自主憲法と日本のリーダー像を考える。〜」をテーマに8度目のセミナー講演をいたしました。今回は「大阪維新の会」の政策を「たちあがれ日本」の政策とも比較しながら検証してみました。


 今回の講演では、松田まなぶより、最初に政局情勢について簡単な報告を行ったあと、前半は日本のデフレ対策を論じました。そして後半は、大阪維新の会の「維新八策の骨子」を取り上げ、その内容についての考え方を述べた上で、あるべき国家政策のあり方について、たちあがれ日本での政策の検討状況にも触れながら議論しました。

 

●デフレとは何なのか

物価が下落し、経済も不況になることを私たちは「デフレ」と言っていますが、そもそもデフレとは何なのでしょうか。それはおカネの価値が継続的に上がることであり、それによって「資本主義」が崩壊することです。おカネの価値が上がると何が起こるのか。


第一に、誰もが価値の上がっているおカネを使おうとしなくなるということです。おカネが支出されないのですから、経済は当然、不況になります。


第二に、借金の実質的な価値が上がることです。その結果、企業などでは、借金を抱え続けることが重圧になっていきます。そこで、皆が借金を減らそうとします。そうなると、企業などは、借金をして投資するということをしなくなります。借金をして投資をするということは、資本主義の本質です。デフレは資本主義を機能不全にしてしまいます。


では、日本でこんなに長くデフレが続く真の原因は何でしょうか。色々とありますが、最も大きいのは、超高齢化社会です。高齢世代は、現役世代に比べて、おカネをあまり使わない世代です。日本では、そうしたおカネを使わない世代の人口比率がどんどん高まっているのですから、国全体の総需要は減っていくことになります。その結果、日本全体の供給能力に比べ、総需要が不足する状態になります。
 その不足分のギャップを「デフレ・ギャップ」と言います。その大きさは、最近の数字で日本は年間で15兆円程度と言われています。こうした、総需要が生産能力に満たない状態が続くと、いずれ、生産能力そのものが使われずに劣化し、日本経済の潜在的な成長能力そのものが低下していくことが懸念されます。
 特に今年は団塊の世代が65歳以上の高齢世代に入り始める年です。総需要だけでなく、経済の成長力のほうも本格的に低下していくことが懸念されます。

●デフレのときには政策の発想転換が必要

さて、デフレギャップが大きい「デフレ経済」のときと、逆の「インフレ経済」のときとでは、正しい経済政策も逆転するはずです。しかし、日本では、80年代後半〜90年代のインフレ経済のときに、デフレ経済のときに採るべき政策(消費税導入時の史上最大の減税や630兆円もの公共投資基本計画など)が採られました。それもバブルの一因でした。逆に、21世紀に入ってからは、デフレ経済の下でインフレ経済のときに採るべき「レーガン・サッチャー政策」(小泉構造改革)を採ったことでデフレが加速しました。
 ですから、いま必要なのは、「ポリシーレジーム」の大転換だとも言われます。民間経済が合理的に行動すればおカネが回らない経済では、逆に、合理的な行動をしない(価値の上がっているおカネを使う)主体が必要です。それは政府しかありません。デフレのときに重要なのは、民間の市場原理ではなく、「政治」だといえるでしょう。

そこで、「資本主義」が崩壊している現状では、資本主義を生き返らせるためにこそ、非市場経済的なレジームへの政策転換も必要だということになります。デフレギャップが解消するところまでは、一定の「社会主義」政策で総需要を拡大する「臨時異例の政策」が必要だという意味で、例えば、小さな政府から大きな政府への転換、競争促進よりも政府による雇用の確保、地方分権よりも中央集権…などが求められることになります。


●今こそ公共投資の拡大が必要

しかし、デフレギャップが解消した時点で「臨時異例の政策」を元に戻すのは現実的には困難です。特に、制度面でいったん政府を拡大してしまうと、なかなか元には戻りません。ただ、現行の制度のもとで政府がおカネを有効に使える方法があります。
 それは公共投資です。萎縮した経済において、政府がさまざまな需要を掘り起こすために、公共投資を拡大し、それを起爆剤にして、積み上がった日本の巨額な金融資産がマネーへと循環していくことを促す。それが現実的なデフレ対策です。

 特に、日本の国土は、欧米とは比較にならない公共投資を必要としています。近年、主要国の中で日本だけが公共投資を縮減してきました。今回の大震災が突きつけたのは、震災復興や、「列島強靭化」に向けた防災安心国家の建設の必要性でした。もとより、老朽化したインフラを更新しなければならい時期に日本は入っています。社会的に意味のある公共投資のテーマは、百出している状況です。


デフレ克服のポイントは、経済にマネーを循環させることですが、日銀が金融政策でいくらマネーを増やそうとしても、やはり、実需が伴わなければ、経済には十分なマネーが行き渡りません。


●消費税で赤字国債は減らすが、建設国債は増やす

公共投資といえば、日本の財政赤字が心配になるかも知れませんが、財政規律で重要なのは、将来にツケだけを残す赤字国債を減らすことです。他方で、将来世代に資産を残すための借金である建設国債は、将来世代も負担を分かち合うことがむしろ公平です。ですから、建設国債はおよそ3世代にわたる期間である60年をかけて償還するルールになっています。
 問題は、赤字国債までもが60年償還になっていることです。赤字国債は償還年限をできるだけ短くすべきです。しかし、それでは毎年の借金返済はあまりに重くなります。要するに、将来に負担だけを残す赤字国債はできるだけ削減していくべきものです。


社会の高齢化とともに膨らんできた社会保障費で、赤字国債は増えてきました。国と地方に入る消費税の税収を全額、社会保障に充てても、今の税率では、必要な額の3分の1しか賄えていません。不足分は赤字国債として将来の負担になっています。
 消費税率引上げは、赤字国債を削減する道筋を示すことで、財政規律を確保することになります。財政規律が働いているという状態は、国際金融市場で日本の国債が信認を維持する上で欠かせません。もし、信認が失われると、国債の価格が下がり、そのほとんどを保有している日本の銀行のバランスシートは悪化するでしょう。その結果、貸し渋り・貸し剥しがひどくなり、日本のデフレはさらに加速することになりかねません。
 消費税を引き上げて赤字国債を減らす一方で、意味ある公共投資を拡大して建設国債は増やすという組み合わせが、デフレ克服のために必要な政策のあり方だということになります。


●政党が提示すべき政策のあり方について

日本にいま必要なのは、政策についてのビジョンと体系です。例えば、経済政策については、上記に述べたような全体像の中で消費税を考えるという組み立て方がなければ、国民は増税に納得しないでしょう。必要なのは、「社会保障と税の一体改革」を超えた「経済政策と税の一体改革」ではないでしょうか。
 そして、国の財政も、そのような経済政策が国民の選択と納得のもとに実行されるよう、「見える」形へと、財政運営の方式を組み替えていく必要があると考えます。そのために、複式簿記を導入し、国の一般会計を、政府投資勘定(建設国債が財源)、経常勘定(消費税以外の税収等が財源)、社会保障勘定(消費税が財源)に区分することも必要だと思います。

松田まなぶは、たちあがれ日本の政策宣言(マニフェスト)の策定に当たって、「国力倍増計画」を提案しています。今回の勉強会では、国力倍増として例えばこんな項目が考えられるという案をお示ししました(後記の参考を参照)。そしてその下に、自主憲法の制定や、政治の立て直し、外交安全保障などについても、どのような柱立てを打ち出すべきかを打ち出しました。


●国家体制のあり方をきちんと提示すべき

自主憲法については、やはり、日本国憲法を改憲できる憲法にして、国民自ら、国のあり方を考えていく営みを促進することが前提だと思います。その上で、自立や「公」の精神、権利と均衡する以上の「責任」を考え、それを真の豊かさと生き甲斐につなげていける国家をめざすべきだと思います。

政治の立て直しについては、国家体制の設計をきちんとすべきです。国家にはやるべき機能がたくさんあります。有事対応も含め、それが十分にできていないことを、今回の震災は露呈しました。国はそのような分野で役割を拡大し、平時の日常行政は地方の自主自立に委ねていくべきでしょう。強い統治能力と活力ある民主主義に向けて、選挙制度なども改編すべきです。行政改革も、単に公務員を減らすのではなく、「機能する政府」を組み立てるという視点から、行革自体を改革すべきです。

外交・安全保障では、国際社会の中での国家の基本路線を提示した上で、米国依存ではなく自分の国は自分で守る尊厳ある自主独立国家をめざすべきですが、単なる気概ではなく、そのための現実的な方策をしっかりと組み立て、必要な資源を配分すべきです。

その他、松田まなぶの政策体系と、それを映じた「たちあがれ日本」の政策大綱は、別の機会にお示ししたいと思います。


●大阪「21世紀をまなぶ会」4月6日(金)では…

4月6日(金)の夕刻に大阪で開催した「21世紀をまなぶ会」では、以上に加え、大阪維新の会の「維新八策」についても論評を試みてみました。基本理念としての「決定でき、責任を負う民主主義、統治機構」、「自立する個人、地域、国家」をはじめ、各政策項目も、基本的な考え方には共鳴できるものが多いように思います。

課題は、これを国家政策のレベルでまとめあげることだと思います。単に大阪都構想を唱える地域政党であっては、国の「維新」はできません。今後の進展に期待したいと思います。

大阪でのこの定例講演会も、第8回目の開催となり、これまでの「勉強会」から一歩踏み込んで、政治は具体的に何をなすべきか、という点に議論の重点を移してみました。参加者の方からは、大変分かりやすかった、日本が向かうべき方向について考えるべきことが何かよく分かったという声をいただきました。これからも、政治選択についての具体論を深めていきたいと思っております。


●次回以降の予定

この「21世紀をまなぶ会」、次回以降は下記の日時、テーマと場所にて予定しております。

第9回 2012年5月11日(金)18:30〜 テーマ: 「行政改革」を斬る。〜人気取り政治はもう要らない。国力倍増へ、平成の「八策」〜

第10回 2012年6月2日(土)16:00〜 テーマ(仮題): 有権者が主役の政権選択。どうみる、各政党マニフェスト。

会場:大阪市北区中崎西4−3−32 タカ大阪梅田ビル9階 セミナールーム

お問合せ先:「21世紀をまなぶ会」Tel:06-6375-3331  Fax:06-6375-3341

Eメール: matsuda-pri@kne.biglobe.ne.jp

 

経済講演は、その他、色々な機会に行っていきたいと考えています。

日本再建に向けて、できるだけ多くの方々とともに、日本の本質的な課題は何かを考え、その解決の道を模索していきたいと思っております。


 

(参考) 国力倍増へ、たちあがれ日本人!

@【自主憲法】 国家としての自主独立性。

A【政治】 国力倍増へ、リーダーシップと信頼再構築。政治家の能力倍増。

B【外交・総合安全保障】 外交力倍増。国防力倍増。

C【教育】 教育力倍増。基礎学力倍増。人材力倍増。公意識と国家意識倍増。科学技術力倍増。知の創出力倍増。文化的影響力の発現・発信力倍増。国際社会で活躍するアーティスト倍増。

D【経済】名目成長率倍増。デフレ脱却2年の総需要新興期間+生産性上昇3年の構造政策期間=「経済力倍増5ヶ年計画」

E【財政】 財政対応力倍増。「見える化」で納税者の納得感倍増。

F【環境とエネルギー】 エネルギーの安全安心倍増。エコロジーパワー倍増。地球環境貢献倍増。環境対応インフラ輸出倍増。

G【安心社会】 国民の安心倍増。社会保障の財源力倍増。生涯現役社会と女性活躍社会のサポート倍増。生産的セーフティーネット倍増。「真の」弱者保護倍増。地域の「公」による福祉力倍増。高齢者安心「まちづくり」倍増。

H【国と地方】 地域力倍増。地方の自立力倍増。地域の価値創造・発出力倍増。

 I【農本立国】 競争力倍増10ヵ年計画。新たな農村再生10ヵ年計画。農産物市場倍増。リタイア農業倍増。