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地方の自立をテーマに、橋下市長お膝元の大阪にて3月3日に経済講演を実施。大阪都構想とは何なのかを議論。

 

 明治維新以来の体制の変革へと、大阪維新の会の動きが注目を集めています。それは日本の何をどのように変え、何を実現することになるものなのか。3月3日に大阪にて「やればできる!地方の自立と地域からの挑戦〜大阪都構想で日本はどうなるのか。〜」をテーマに7度目のセミナー講演をいたしました。今回は「維新」の動きをみていく上で、まずは国と地方の関係を取り上げてみました。


 ●地方にとっての戦後システムとは〜護送船団の構図〜

地方の自立が叫ばれて久しいですが、現実には、「自立」に向けた進展はほとんど見られていません。この問題をしっかりと考えるためには、戦後日本で地方の自立を妨げてきた要因は何だったのか、正確に理解する必要があると思います。

それは、中央集権的な「戦後システム」が、地方にとって「一律、公平、平等、順番待ち」に象徴される、中央への依存を強化するシステムだったことにあります。

確かに、地方自治体の間では大きな財政力の格差があり、経済的に自立が困難な団体がほとんどです。その下に戦後作られたシステムは、どの地方にもあまねく最低限の水準、いわゆるナショナルミニマムを達成するために、中央の富を分配する「分配型国家」の設計思想で設計されたものでした。

しかし、一応のナショナルミニマムが達成されたこんにち、それは巨大な無駄とモラルハザードを生むシステムになっており、ギアチェンジが必要になっています。「富の分配モデル」から「富の創出モデル」への転換が問われており、ミニマム水準を上回る豊かさや利便性の追求は「受益と負担」で各地方の選択の問題に委ねる必要が出てきました。一律保証を超える部分には「自己決定」を持ち込むことが、「地方の自立」の上で必要です。


●「地方分権」という政策設計の限界

 ただ、これまで進められてきた「地方分権」は、そうした「自立」へと地方を導く上で実効ある政策にはなりませんでした。目指すは、「自主性・裁量性の高い地方自治が住民の選択によって営まれる状態」であり、「受益と負担の関係が意識された中で地域住民のチェック機能と自己選択により住民のニーズに即した効率的な行政運営が実現」することであり、中央への「陳情の学校」と化してきた地方自治に、真の「民主主義の学校」を取り戻し、それを民主主義の基盤とすることです。

小泉政権の下で国から地方への補助金の削減と税源の移譲が進められました。しかし、税源を移譲しても、それは課税権という制度を移譲することであり、そもそも税収の「税源」とは産業や人口、生産性に基づくものですから、地方の間の税収格差はかえって拡大してしまいました。大事なのは地方に課税自主権を与え、地方自らのイニシアチブによる独自課税を進めることです。しかし、現実問題として地方の間の財政力の格差は大きく、やはり、国が財政力の弱い自治体への財源の手当てをどうするかを考えねばなりません。 


●日本で最後に残った「護送船団方式」−地方交付税交付金−

そこで、地方交付税交付金という大変精密な財源分配の制度が日本では営まれてきました。しかし、それが現実には、地方の歳出が増えた分だけ国が面倒をみるシステムとなってしまった結果、地方としては、歳出を膨らませて国に依存したほうがトクだという、およそ自立とは逆のインセンティブを地方自治体の運営に与えてしまいました。

地方の借金である地方債制度もそうでした。地方は借金する際に、国に相談しなければなりません。かつては、その借金の大半を、国の財政投融資に頼っていました。しかも、その元利返済は、後年度に地方交付税で面倒を見るという仕組みもあり、国は地方を丸抱えで誘導し、地方は負担感の少ない支出で事業ができるということから、地方行財政では、財政規律も経済合理性も無い運営が行われてきました。

これは自立とは異質の設計でした。地方の首長は住民との負担の相談もなしに国に依存して受益を地方に誘導できるシステムです。そのことが、タックスペイヤーではなく「タックスイーター」へと日本の民主主義を堕落させてきたとも言われています。国民から政治や行政に関する当事者意識を奪う原因にもなっていたのではないでしょうか。


●地方の「自立」と日本のニューディール

「大阪都構想」は、自立型国家への課題設定を問いかけるものであってほしいと思っています。日本の地方や地域社会が、日本の課題解決の場として機能してこそ、真の自立が達成できるものと考えます。21世紀は、日本にとってチャンスの世紀です。人類史上初めての超高齢化社会を日本は迎えています。それを活力ある社会として運営するモデルを日本は構築する位置にある。それは世界が求める答でもあります。そのために、日本に新しいストーリーを生み、持続可能な成熟社会の成長モデルへと、人間の活動領域に新しいフロンティアを拓くニューディールが日本の将来を拓くカギです。その実践の場が地域社会だと思います。


●地方の「自立」の概念変更を

問題は、「地方の疲弊」が、世界経済の構造変化の下に生じている先進国共通の現象だということです。しかも、地域の再生には共通の答はありません。それぞれの地域が、自らの独自の特性を活かしつつ、自らの運命を自己決定していくところにしか答はない時代になりました。

「分権」とは権限や財源という制度に関するものです。それは目的を達成するツールに過ぎません。それぞれの地方がどのような「幸せ」を追求するかという目的があってこそ、その実現のツールの議論に意味が生まれます。現状はどうも、分権という「形」から入る議論が多すぎるようです。形を変えるには大変な時間がかかります。それよりも、いま起こそうと思えば起こせる動きをいかに起こすかを考えるべきでしょう。

そこで、制度というハードウェアとは少し別の次元から「自立」を考えてみてはどうでしょうか。つまり、自立をソフトウェア面での自立と捉えることに発想を転換すべきです。それは思考の自立です。自らの地域が生み出す価値とは何かを特定し、そこにテーマを設定し、それに向けて地域を「経営」する。パワーを分けてくれということでは、国依存です。たとえハードパワーでは国に依存しても、ソフト面で「自立」が営まれていれば良しとすることで、主体的で戦略的な依存を考えてみるべきです。

今の議論の多くは制度的な形の議論が中心ですが、もっと中身から入る発想が必要です。エコノミクスのつじつまの合う実態的な議論こそを進めるべきです。


●道州制は答になるのか

そもそも道州制のエコノミクスの本質は、州の中核都市への経済力の集積を進めるべく、集積の裾野を拡大することにあります。その結果、「州都」への吸引という副作用が生じかねません。かえって、「地方の衰退」を加速する場合もあるでしょう。道州制が答になる地域もあれば、そうでない地域もある。結局、各地域が独自の存在価値をどう構築していくかということが先にあり、結果としての制度は、それぞれの地方の実情に応じて組み立てていくしかないように思います。

道州制自体が一種の一律指向のようにも思われます。テーマによるゆるやかな地域連合という形も考えられます。それは価値観の多様化した知識社会では有用な設計になるでしょう。地域再生のエコノミクスにとって最もふさわしいハードウェアの形を各地域が模索すべきです。大阪都構想もその一つだろうと思います。

松田まなぶの考えをいくつかのキーワードでまとめれば、「地域自らのテーマを自ら発見する」、「地方分権から地域価値創出へ」、「世界の潮流は集積を中心に発展し集積に依存するモデル」、「集積地への戦略的依存を自立的な思考で考えるのが『自立』」、「ソリューションは地域アイデンティティーのデザイン」といったことになります。

 

●大阪「21世紀をまなぶ会」3月3日(土)では…

3月3日(土)の夕刻に大阪で開催した「21世紀をまなぶ会」では、さらに、超高齢化社会などの時代の潮流を活かしながら地域の再生と地方の自立をどう設計するかについて、具体的に論じてみました。詳細は別の機会に譲りますが、超高齢化・人口減少社会での地域設計の思想は「戦略的撤退と再集結」にあり、分散した高齢者の居住を都市中心部に集結させることに答の一つがあります。そして、こんにちの成熟ストック経済においては、地域再生でも、地域に蓄積された資源と民の潜在パワーをどう活かすかが問われます。答は、超高齢化社会を活用した地域の「公」のモデル創りにあるのかもしれません。

大阪でのこの定例勉強会も、第7回目の開催となりました。

参加者の方からは、日本のシステムがどうなっていたのか、何が問題だったのか、よく分かったという声がありました。何よりも重要なのは、これからの日本を動かすのは地方のイニシアチブであり、それこそが自立型国家の形成につながるという認識を多くの方々が共有することだと思います。

この「21世紀をまなぶ会」、次回以降は下記の日時、テーマと場所にて予定しております。

 第8回:2012年4月6日(金)18:30〜「維新八策と国家体制。〜「自主憲法」と日本のリーダー像を考える。」

 第9回: [未定] 2012年5月11日(金)18:30〜(仮題)「行政改革を斬る。世界と向き合うニッポンへ。」

 第10回[未定] 2012年6月2日(土)16:00〜(仮題)「有権者が主役の政権選択。どうみる、各政党マニフェスト。」

 会場:大阪市北区中崎西4−3−32 タカ大阪梅田ビル9階 セミナールーム

 お問合せ先:「21世紀をまなぶ会」Tel:06-6375-3331  Fax:06-6375-3341

Eメール: matsuda-pri@kne.biglobe.ne.jp

 

経済講演は、その他、色々な機会に行っていきたいと考えています。

日本再建に向けて、できるだけ多くの方々とともに、日本の本質的な課題は何かを考え、その解決の道を模索していきたいと思っております。