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アベノミクスをどう考える。参院選で議論されなかった経済政策の論点。アベノミクスにはいったい何が不足しているのか。「第3の矢」に必要な「3つの追加の矢」と「第4の矢」。日本に必要な「維新」を考える。






今回の参院選、選挙の応援活動をしていて感じられたのは、どうも国民の関心が薄いということです。今後3年間、国政選挙がない可能性が高いと言われているのですから、今回、これを単なる自民党政権の信任選挙に終わらせず、政界に選択肢を増やしておくことも大事ではないかと思いました。

特に、アベノミクスが本物の持続的成長につながるかどうかは、現段階では未知数です。成長に必要な「組み立てる」改革を先導し、自民党政権に物申す強い政治勢力が国会には必要なはずです。

「ねじれ」が解消して、決められる強い政治が実現するのであれば、有権者としては、政界に一定の緊張感を確保することにも意を向ける必要があります。集票でお世話になった既得権益に切り込むことは、自民党だけで物事が決まる政治のもとでは困難になるのではないでしょうか。

 以下、経済政策に関する論点を中心に、私が参院選に当たってメルマガで発信した内容を掲載いたします。大事なのは、これらの政策の実行です。






[「第3の矢」に必要な3つの矢と第4の矢]

 

○第1の矢:大胆な金融緩和

 「流動性の罠」状態ではインフレ期待の高まりは名目金利を上昇させやすく、実質金利を下げることは至難の業。不足しているのは、実際にマネーが増えるために必要な、金融と実体経済どう噛み合って持続的成長に結びつくかの説得力あるシナリオ。

 

○第2の矢:機動的な財政政策

 臨時異例の措置ゆえ、消費増税と相まって、来年度は財政が経済成長率を低下させる要因に転化。不足しているのは、これを克服するポリシーミックス戦略と、経済成長と財政健全化が両立するシナリオ。いまの仕組みのままでは、消費税率を10%よりさらに引き上げるか、年金を大幅に削減したり医療の自己負担を増やすなどで社会保障給付に大ナタをふるうか、いずれかをしなければ、つじつまの合う「中期財政計画」は作れない。だから、自民党政権は参院選前にこれを策定しなかった。「不都合な真実」に蓋をして選挙で勝つことを優先する政治が相変わらず継続。

 

○第3の矢:成長戦略

 アベノミクスは、最初の2つの矢でおカネを積んだだけ。肝心なことは、おカネが回るようにすること。(もとより日本には、巨額の金融資産と世界最大の対外純資産が示すように、十分なおカネがある。「失われた20年」も15年続くデフレも、日本経済がおカネが回らない体質になっていることが原因)

・そのためには、戦後続いてきたさまざまな仕組みを、超高齢化社会やグローバル化、あるいは成熟ストック型経済など時代の変化に合わせて、「再設計」することが不可欠。

・そこには社会保障の仕組みも含まれる。消費税率をどこまでも上げ続けなければ超高齢化社会に対応できないようなフローに依存した仕組みではなく、巨額のストックを活かしてフロー化する方向で「負担」の問題を解決。税制面では資産課税の捕捉を強化。「共助」の世界では「コストからバリューへ」の概念転換が必要。

これらをやり遂げるためには、既得権益の打破が不可欠。

多くの党が批判しているように、自民党の成長戦略が規制改革(混合診療解禁、農協改革、労働市場改革など)や法人税の実効税率引き下げなどに十分踏み込んでいないという点は確かにそうだが、日本経済を本当に成長させようとするならば、次の3つの矢を追加することが必要。

 

<追加の矢の1本目> 経済維新

 前回報告の「三種の神器」。ネクストジャパンに向けて様々な領域で社会システムを地域を舞台に設計。日本が「世界の課題解決センター」に。

報告書「異次元の経済へ、維新のとき〜ネクストジャパン、日本維新の会が実現する次なるニッポン〜」
本文はこちら↓。

http://matsudamanabu.jp/archive2013/130625-R3-keizai-isin.pdf

 簡略抜粋版はこちら↓。

 http://matsudamanabu.jp/archive2013/130625-R3-bassui.pdf






<追加の矢の2本目> 財政運営の大改革

 賢い財政支出(Wise Spending)で未来への投資。バランスシートによる資産負債管理。資産価値の査定とそれにふさわしいファイナンス手段で多様な資金調達(金融資産の運用対象多様化)。

・未来への投資とは、戦略的な政府投資。従来の公共事業から、科学技術、エネルギー開発、人的資本など、知的資産も含めた幅広い真の「資産」の概念にシフト。

 日本には、1,547兆円の個人金融資産も含めて約2,800兆円の金融資産がある。問題は、その運用先。日本の資金の流れのメインルートは、個人から銀行に預金されたおカネが国債に回っているというもの。しかも、その国債の大半は、将来に資産を残さず、ツケだけを残す赤字国債。日本経済の重大な問題は、このように、金融資産の資産選択、すなわちポートフォリオの質が、非生産的なものとなっていること。

⇒このような国民資産のポートフォリオの中身を、これまでの赤字国債(将来の富を削減)から、生産的な運用対象へとシフトすることで、将来に向けて富を生む生産的な内容へと改善することが課題。

・日本は世界ダントツ一位の約300兆円もの対外純資産を有する国。これは、国内で生み出された貯蓄が国内にうまくマネーとして回らず、海外に溢れ出している証左。おカネが国内でうまく回る経済へ。生産的な投資へと資産の運用先をシフトする。

・こうしたポートフォリオの改善は、中長期的には、上述の「追加の矢の1本目」によって、価値の高い社会システムを生み出し、それを評価する資産保有者のマネーが引き出されていくことによって達成されるべきもの。

・しかし、それには時間がかかる。当面は、政府のイニシアチブが必要。政府の投資であっても、それが将来の富を増大させる生産的な投資であれば、金融資産の質を改善させることになるのは、民間投資と同じ。

・そのための財源であれば、将来世代に意味ある資産を残すためのファイナンスとしての国債発行ということになる。赤字国債と建設国債を明確に区別。

・建設国債は上述の「未来への投資」の財源へと概念を再構築し、形成される資産との見合いで償還期間を多様化。形態も、通常の60年償還だけでなく、超長期償還国債、成長成果配当型無期限債、無利子非課税国債など多様化し、様々な資金運用ニーズに応えるとともに、資産負債のバランスシート管理を徹底。この部分は「投資勘定」として、一般会計の他の歳入歳出から区分経理。

・赤字国債は、今般の消費増税で毎年度の発行額が減少するが、将来に資産を残さずツケだけを残すものとして財政法で禁じられているとの原理原則に立ち返り、60年償還ルールから外して、できるだけ現世代の間に償還するよう努める。

・社会保障勘定を設ける。社会保障給付に充てられる財政支出と歳入(現在は消費税収の全てと赤字国債)を、一般会計から区分経理。消費税は国民から国民へのおカネの移転(政府の懐に入るものではない)であり、その不足分の赤字国債は将来世代へのツケ回しとなっていることを明確化し、国民自らが受益と負担の水準について判断できるようにする。

・以上の3区分化(「投資勘定」、「社会保障勘定」、その他の「経常勘定」)で、それぞれ異なる論理のもとに財政が運営されることによりメリハリある真の「機動的な財政政策」が実現。国民自らによる政策選択が可能な財政へと、財政の「見える化」が実現。

・財政規律は、専ら赤字国債の縮減をもって図ることとする。「未来への投資」の建設国債の増発は、赤字国債の発行減の範囲内にとどめ、全体として国債発行額は増やさない。

・ちなみに、増税額と同額だけ政府支出額を増やせば、乗数は1となり、GDPは増税額と同額増える。財政を悪化させずに景気回復を達成する道に。

 

<追加の矢の3本目> TPPについて攻めの交渉で国益を実現
 超高齢化、人口減少に直面する日本にとって、マーケットの面でもサプライチェーンの面でも投資の面でも、自国の繁栄基盤を広く海外に求めていくことが不可欠。そのために、世界で形成されつつある国際経済秩序が日本にとって有利なものになるよう、そのルール作りに日本が参画。「儲けは海外で、雇用は国内で」の成長パターンを実現。

 

〇第4の矢日本維新の会が提唱する統治機構の改革
 これは、以上の経済戦略を実現する手段ともなるもの。例えば道州制は、日本各地に広域経済圏を形成し、中核都市への集中を促すことで、競争力の強い地方を生み出す。また、日常の行政を委ねられる強い受け皿を地方に創り、国家は国家にしかできない機能に特化することで、戦略的に機能する強い政府を構築。賢く強くしたたかな国家へ。