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今国会の最後に、衆院本会議にて6月24日、日本維新の会を代表して安倍総理に対し、G8サミット出席報告に関する代表質問に立ちました。


会議の様子


当日の会議の様子は以下のリンクよりご覧いただけます。

衆院本会議動画:(16:04)



 各党とも今国会最後の見せ場ですので、自民党からは石破茂幹事長、民主党からは野田佳彦前総理、その次が私で、その次は公明党の井上義久幹事長…と重量級の投入の中での代表質問でした。それも、昨年の衆院解散のとき以来の登壇で安倍総理とのやり取りとなった野田前総理の、約束したはずの定数是正が反故にされたことを追及したことがマスコミでも取り上げられた、さすが…、とうならせる名演説のあとでしたので、どうなるかと思いましたが、おかげさまでなんとかやりきりました。


 参院選を控えて国会では党をアピールする最後の機会でしたので、日本維新の会がなぜ国政で必要な存在なのかを訴える骨太の原稿を用意しました。この代表質問、前週の木曜日の昼ごろに私にやれとの指示が来て、質問通告は前日との原則から、当日が月曜日なので、翌金曜日の昼までに用意せよ、と言われ、その日はすでに夜まで予定がびっしり埋まっていましたから、結局、木曜日は徹夜で質問の要旨を作成。全文の原稿自体は土日に書き上げましたが、その土日も都議選の応援、参院選の応援で予定が埋まっていたので、かなり大変でした。


 総理の答弁は残念ながら、とても答にはなっていませんでしたが、本会議という場では仕方ありません。いずれにしても、大政党では一回生議員にこのような場を与えられることはなく、実に名誉なことでありました。党内だけでなく、他党の議員からもねぎらいの言葉をいただきましたが、これからも質問のクォリティーへのこだわりを持ち続けたいと思います

 なお、当日の質問原稿については下記になります。



衆院本会議(平成25年6月24日)代表質問原稿

日本維新の会の.松田学です。

 私は、日本維新の会を代表して、今回のG8サミット出席等の報告に関して、総理に質問いたします。

 

今回のサミットの成果として、総理はアベノミクスが評価されたことを高らかに掲げておられます。

恐らくそれは、一連の危機を脱したあとの世界経済が、成長の主役が不在なままであり、消去法的に、日本に機関車の役割を果たしてもらおうという期待が集まったからだと思います。

かつて70年代後半から80年代にかけてのサミットでは、西ドイツと日本を念頭に置いた「機関車論」がしばしば主張されました。

ドイツについては、近年においても、法人税率の引き下げ、社会保障給付の削減、雇用ルールの変更などの痛みを伴う構造改革を断行して競争力を強化し、債務危機の欧州経済を支えてきたという実績があります。

ただ、このドイツのような役割を、世界経済に対して今回、日本が実際に果たせるかどうかは未知数です。アベノミクスの「第3の矢」の成長戦略も、参院選で票を失いたくないからでしょうか、真に持続可能な成長につながる痛みの伴う改革は先送りされています。

そして、そのドイツのメルケル首相から、アベノミクスに対する懸念を何点か指摘されたのが、今回のサミットでもありました。

 

それは、金融政策の出口戦略や、日本の財政に対する懸念などでした。

この真摯な問いに、明確な答を示せるかどうかが、アベノミクスへの国際社会での真の評価の決め手になるのではないでしょうか。総理は、メルケル首相に対して、どのようにお答えになったのか、質問いたします。

 

総理はサミットの場で、日本経済のパフォーマンスを誇らしげに語ったとされています。確かに、円安や株高で人々のマインドは好転しましたが、日本の実体経済が顕著に改善して、これが大型の相場につながるかどうかは別問題でした。現にその後、相場は元に戻り、本命の「第3の矢」の発表も市場では「売り」という結果になりました。

 

私たちは、15年にわたって続くデフレを克服しようとするアベノミクスの方向自体は正しいと考え、先の衆院選後、一貫して支持してまいりました。

問題は、アベノミクスはデフレ克服への必要条件の一部に過ぎないということです。それだけでは不十分です。リスクも大きくなります。

今のところ、アベノミクスの成果は、おカネを積んだことだけです。日銀のバランスシートの資産に国債というおカネを積み、政府の予算を拡大して公共事業におカネを積んでいるに過ぎません。大事なことは成長戦略によっておカネを回していくことです。

人々の期待の改善が持続的なものになるためには、おカネが経済や社会に行き渡っていく仕組みを創りだす必要があります。

この点こそが、日本の政治には問われているのではないでしょうか。

 

まず、金融政策ですが、日本は、金利が下限に張り付いて、マネーを増やしても金利が下がらない「流動性の罠」に近い状態にあります。

そのもとでは、人々の期待を変え、予想インフレ率が上がることで実質金利が下がるというルートでなければ、金融政策の効果は出ません。

その前提は、金利が上がらないことですが、黒田日銀総裁は先週の財務金融委員会での答弁でも、長期金利はコントロールできないとしています。

また、先般、FRBのバーナンキ議長の発言で世界の市場が混乱したように、政策の規模が大きければ大きいほど、それが市場では標準化して、バランスシートのわずかな調整だけでも、市場に対して莫大なインパクトを与えるリスクが生じます。

 

日本の市場のボラティリティーが世界経済を混乱させることなく、日銀が決めた画期的な「異次元緩和」を活かしていくためには、金融と実体経済がどのように噛み合って、日本経済の成長経路がどのように描かれることになるのか、全体的な道筋を明確に示す必要があります。

総理はそうした説明責任を今回のサミットでもきちんと果たしたのか、質問いたします。

 

次に、メルケル首相も心配した日本の財政についてです。

財政審の報告書は、日本が「奇妙な安定」状態にあると指摘しました。

これは企業の設備投資の伸び悩みが民間部門に余剰資金を滞留させ、これが銀行を通じて国債に運用されて低金利状態となることで財政が回っている、という姿です。デフレ克服とはこの「奇妙な安定」を崩すことにほかなりません。

いずれ、経済成長率が上がれば長期金利は上昇し、これによる国債利払い費の増大に、経済成長による税収増が追い付かず、財政を悪化させることになりかねません。

 

 政府は、実質で2%、名目で3%の経済成長を想定していますが、長期金利が名目成長率を上回っている限り、政府債務残高の対GDP比は発散的拡大を続けます。政府が目標にしているプライマリーバランスを達成しても、名目成長率が長期金利を上回らない限りは同じです。そのようなケースは日本では、名目成長率が概ね4%以上のバブルのときしかありませんでした。

つまり、政府が理想とする名目3%の経済成長を達成しても、財政は持続可能にはなりません。

 

今回のG8コミュニケで、日本は「信頼できる中期的な財政計画を定める」べきだとされました。経済成長とつじつまの合う「中期財政計画」は果たして描かれ得るのでしょうか。それ無しでは、アベノミクスが本当にサミットで評価されたことにはならないと思います。

政府のプライマリーバランス目標も、今の仕組みのままでは、社会保障費に大きく切り込むか、消費税率を10%からさらに引き上げなければ、達成できません。このような痛みの伴う改革こそが「信頼できる計画」の中身であります。

こうした計画策定を参院選後に先送りしたままでは、国際社会に対しても有権者に対しても、まやかしをしていることになります。

総理のご答弁を求めます。

 

日本の政治は長年、選挙で票を失うことを恐れ、財政の「不都合な真実」から国民の目を背けさせてきました。

有権者の耳に痛いことであっても真実を語り、国民とともに課題の解決を考えていくスタイルの新しい政治が、いま求められていると思います。

 

さて、日本の経済運営で大事なのは、来年春に向けてどうするかです。

今般の公共投資の拡大が「臨時異例のもの」なら、来年度は公共投資を平常レベルに戻すことが経済成長率にはマイナスに寄与することになります。

これに来年4月からの消費増税が加わりますから、このままでは財政が二重の意味で成長の足を引っ張る要因に転化します。

コミュニケでは、財政政策は「経済状況に応じて短期的には機動的となる」べきだとされましたが、日本政府として何らかの財政追加を想定しているのか、来年度に向けたポリシーミックス戦略はあるのかどうか、質問いたします。

 

政府に頼らなくても、日本には本来、成長への潜在パワーが十分にあるはずです。それなのに何故、「失われた20年」の経済停滞が続いてきたのか。1,500兆円もの個人金融資産と300兆円近い世界ダントツ一位の対外純資産を有する国でありながら、豊かさを実感できないのは何故なのか。

それは、戦後続いてきた統制的で、既得権益を保護する様々な制度や仕組みが行き詰まっているのに、これを根本から変える本物の「改革」が行われてこなかったからです。

改革こそが本当の意味での成長戦略です。

普通の国民におカネが回るようにするためには、日本人が積み上げてきた資産を日本人の豊かさのために、社会保障や相互扶助のために活用できるよう、賢い経済運営、賢い社会システムが必要です。

そのためには、業界団体や既得権益に選挙の票を依存せず、一般の国民や消費者の立場に立ってネクストジャパン、新しい日本を組み立てる政治が必要です。

総理は「日本を取り戻す」、「ジャパン・イズ・バック」という言葉を使っておられます。しかし、大事なのは、かつての日本に戻ることではありません。時代の変化にふさわしい新しいストーリーを歩む日本の姿を描くことだと思います。

総理が強調するような世界経済を牽引する役割を日本が本当に果たすためには、日本の未来に対する国際社会の信頼を醸成しなければなりません。総理は今回のサミットで、それをどのように示すことができたのか、質問いたします。

 

さて、アベノミクスの成長戦略もそうであったように、今回のG8のコミュニケも、大々的に課題を並べただけのようにみえます。以下、日本として具体的に何をすべきかが明らかではない項目について、質問いたします。

 

まず、コミュニケにありますFTAの推進ですが、総理もTPPなどの推進で成長力を高めると表明しておられます。

そのためには、例えば農業については、高関税などの水際規制方式から、先進国にふさわしい手法である直接支払の財政方式へと、農業保護政策の抜本的な転換を決断し、これをコメの関税の段階的削減と整合的に組み合わせながら実現していくロードマップを、きちんと描く必要があるのではないでしょうか。

農業に限りません。真の改革を進めるなら、改革の先にある日本の将来像を示す必要があります。選挙で不利になることを恐れてレトリックに逃げているようでは、成長戦略にはなりません。総理のご認識をうかがいます。

 

また、TPPや米-EU間のFTAなど、世界は新たな経済秩序やルール作りに向けて大きく動き出しています。ここでイニシアチブをとれるよう、日本が目指す国際経済秩序のビジョンを、総理はG8で提起することができたのでしょうか。

 

次に、今回のG8で英国から提起された3つのT、貿易、税、透明性のうち、税についてです。グローバル経済の進展とともに各国間での税制の調和がますます必要になっています。総理も税逃れ対策の重要性を提起したようですが、これは法人税引き下げ競争を避けることを意図したものなのでしょうか。

法人税の実効税率が著しく高い日本の場合、税制の調和のために求められているのは、むしろ、日本の実効税率の引下げではないでしょうか、

総理のご認識をうかがいます。

 

また、コミュニケには「脱税との闘い」として、各国間の「自動的な情報交換のための」モデルの策定などが謳われています。

その具体的な内容はどのようなものになるのか、ご説明をお願いします。

日本の場合、こうした情報交換に必要なデータが他国と比べて未整備だという指摘もあります。脱税やマネロンなどへの対策への国際的な要請に応えていく上で、日本は税や資産などの捕捉に必要な基本的なインフラ整備を急ぐ必要があります。今国会でマイナンバー法が成立しましたが、今後、これを預金や資産などにも拡張することを早急に検討すべきと考えます。

私たち日本維新の会は、社会保障における世代の自立を提唱しています。

現役世代にいたずらに負担を求めることなく、高齢世代の中において、世代内相互扶助を推進していくためにも、資産がきちんと捕捉できるインフラ整備は不可欠だと考えます。

 

最後に、今回のサミットの成果として、総理は、北朝鮮の核問題と拉致問題についてわが国の国益を踏まえた明確な立場を主張できたことを強調しています。この点については私たちも評価いたしますが、他方で重要なのは、近年、経済パワーが低下してきた日本が、何を売り物にして、国際社会での存在を築いていくかであります。

超高齢化社会と成熟経済へと移行する中で、これからの日本に必要なのは、安全保障でも、様々な分野での課題解決の上でも、「日本はいったい世界のために何をしようとしている国なのか」という問いに答えられる国になることだと思います。

この点について、今回のサミットに出席されて何を感じられたか、総理の所見をうかがいます。

 

日本が真に自立した国家として世界の中で新しい存在と新しい経済成長を築いていくためには、個人や地方の「自立と挑戦」を妨げている制度や仕組みを再設計する必要があります。

そのためにこそ、国の統治機構の組み替えという「第4の矢」が必要です。

私たちは憲法改正や道州制のみならず、今国会でも財政責任法案をはじめ数々の議員立法を提案させて頂きましたが、それが審議されないまま国会が閉会を迎えようとしているのは誠に残念です。

次の国会での実りある審議を期待して、私の質問を終了いたします。

ご清聴ありがとうございました。