横浜銀行の小川是会長をゲストに迎えて、第10回松田まなぶと語る会を開催しました。次回第11回は、作家の大下英治氏を迎え、5月21日に開催します。
2012年3月22日(木)18時30分より、横浜市開港記念会館にて開催された「第10回松田まなぶと語る会」では、「日本の挑戦。〜超高齢化、財政、新しい経済〜」をテーマに、日本が人類史上はじめて迎えている今の状況を克服する道について考えてみました。小川会長からは「未知との闘い」と題したご講演をいただきました。
次回第11回は、作家の大下英治氏に語っていただきます。議論してほしいテーマについて、皆さまのご希望をぜひお寄せください。
人口減少や超高齢化、財政赤字やデフレの問題…、これに震災が突きつけた新たな課題も加わり、日本は世界の課題が集中する「課題先進国」の様相をますます強めています。
3月22日の第10回の「語る会」では、私たちが課題解決に向けて希望のある答を出すにはどうすれば良いか、大蔵事務次官を経て、金融界を代表する立場で横浜など地域経済に深く関わってこられた、官も民も熟知する小川是氏をお招きし、「何事も世界初」の事態を経験する日本のこれからの挑戦について論じてみました。
福岡孝純・帝京大学/法政大学教授の司会で、まず、松田まなぶより最近の活動報告として、政治情勢に対する認識などを述べたあと、小川会長から「未知との闘い」と題したご講演をいただきました。
小川会長が指す「未知」とは、日本が人類社会にとって最先端の「未知」レベルの経済社会を歩みだしていることを意味します。
具体的には、次の3点が提示されました。(1)人口減少。これだけの本格的な民族国家が人口減少を経験するのは、歴史上、日本が初めて。(2)財政赤字。日本は成熟経済ではどこも経験していない財政のインバランスを抱えている。(3)経済の仕組み。先進各国は、人々の欲望に供給が追いつかないという、これまでの経済のあり方をもはや超えてしまい、従来の経済の枠組みでは解決できない問題を抱えるに至っている。
小川会長は、日本の人口動態のショッキングなありさまや、市場の圧力と民主主義の下で、景気対策と社会保障が気の遠くなる財政累積債務をもたらしたこと、これらが帰結する深刻な問題を赤裸々に描写しました。特に、一世帯当たりの生涯にわたる[受益−負担]の額が、今の60歳以上の世代が5,000万円近い受益超過なのに対し、将来世代は5,000万円近い負担超過と、1億円もの格差となっている姿は、世代として果たすべき責任の問題について、参加者の皆さまにも強い印象を残したようです。
日本が成長経済から成熟経済へ、そして「未知」経済のステージに入り、必要になっているのは自立と共助に向けた価値観の共有であると小川会長は訴えました。それを、生きる、食べる、欲する、という人間の行動の公約数的な基本に立ち返りながら、分かりやすく説得力ある言葉で諄々と説いて聞かせるお話ぶりに、皆さん大変熱心に聴き入っていました。
ご講演のあと、残されたわずかな時間ではありましたが、松田まなぶが、小川会長のお話を受ける形で、問題提起に対する日本のソリューションの案を示すプレゼンテーションを行いました。3つの「未知」は、まさに、松田まなぶが日ごろ、日本の将来再設計の議論の中で論じてきたテーマでもあります。
ここでは詳細は省きますが、それぞれの論点は後記の【ご参考】のとおりです。
最後に、今回、小川会長はじめ、金融関係者のご参加も多い中で、松田まなぶが強調させていただいたのは、銀行の責務です。それは、赤字国債で国債発行残高が膨大に膨れ上がり、その金利負担を回避するために人為的な超低金利政策が続いている中で、金融機関が採ってきた行動についてです。銀行は安易に国債への運用を拡大し、融資の形で経済にリスクマネーを供給することを、ややもすれば怠ってきたのではないでしょうか。
銀行側からみれば、安全な国債への運用は、責任回避の上でもラクな道かも知れませんが、生産性の高い分野の創造には、リスクをとったチャレンジが必要です。
AIJ問題も、根本的には、国民経済全体が有利運用の機会を提供できなくなっていることに原因があります。年金をはじめ、将来への安心を得るためにも、もっと挑戦者を応援するような経済社会へと日本を変革していくことが不可欠です。
今回は、小川会長と松田まなぶの一方的な語りが中心となってしまったのは反省すべき点でした。次回はもっと、参加者の皆さまが活発にご意見を出していただけるような運営を心がけ、この語る会を、多くの皆さまと希望を語り合っていける場にしていきたいと思っております。
大下英治氏は、松田まなぶがかねてから懇意にさせていただき、ご指導を賜わっている方でもあります。2010年の参院選の際も、応援演説に駆けつけてくださいました。
お話のテーマなど、詳細は改めてご案内申し上げます。
【大下英治さん ご紹介】1944年、広島県に生まれ。1968年広島大学文学部卒業。1970年『週刊文春』の記者となる。1983年、週刊文春を離れ、作家として政財官界から経済、芸能、犯罪まで幅広いジャンルで創作活動を続けている。近著では、「大波乱の予兆・野田民主VS谷垣自民」(ベストセラーズ)、「大物次官、大臣らの証言財務省秘録」などがある。
さて、この「松田まなぶと語る会」では、できるだけ多くの方々の疑問に応えながら、双方向の議論づくりを心がけたいと考えております。次回、大下英治氏に聞きたいことに限らず、皆さまから、この会ではこんなテーマや素材を取り上げてほしいというご意見を募っておりますので、下記まで、ご自由にお寄せください。
ファクス: 045-228-7864
皆さまからのお声をお待ちしております。
【ご参考】松田まなぶが弟10回の語る会で提示した論点
1.少子化・超高齢化
●負担の問題は世代の自立と助け合いで
●コストからバリューへの大転換…凍結金融資産のフロー化
●「活力ある超高齢化社会の運営モデル」の構築を日本の次の国家目標に・・・日本人の新たなストーリー
●「活動し生産し消費し投資する高齢者」の物語を
●週三日働き四日休む高齢者のワーキングスタイル…少しでも稼ぎがあればおカネを使う←二重経済
●地域でできる工夫
●日本版ニューディール
2.財政の累積債務
●不都合な真実
●危機管理モードに入った日本
●消費税引上げはデフレを加速する?
●赤字国債と建設国債の区別
●区別の論理で希望ある増税を
●真の選択肢は消費税率16%のさらに先にある。
3.経済…新しいフロンティア
●デフレギャップ経済の政策
●チャンスとしての震災復興
●成長力低下経済の処方箋
●罪深き?金融機関
●元凶は赤字国債:借換債という経済の重石
●成熟ストック経済のパラダイム
●市場経済を超えて…新たな価値を創出するニッポンへ